「20世紀の間、アニメの世界と軍艦あるいは船舶の世界は割と断絶していて、あまり関係が無かった」
「宇宙戦艦ヤマトは? 決断は?」
「そこまで行くと【軍艦らしきものが描かれていればOK】の世界に行ってしまうのだよ」
「それで?」
「だから、銀英伝のあたりまでは割とアバウトな世界なのだ。取りあえず、記号として宇宙戦艦らしきものが描いてあれば許される世界」
「それが変わったの?」
「そう。宇宙戦艦描写がCG化されたとき、実は上手い人と下手な人の差が露骨に出るようになった」
「同じように描いているだけなのに、手描きからCGになっただけで非難が発生してしまうのだね?」
「そうだな」
「コストアップの問題ではないの?」
「軍艦らしさ、あるいは船らしさはバランスの問題だから、実は作業量が増えるわけではない。細かく作り込めば船らしく見えるわけではない」
「それで?」
「うん。だからね。船を全体のバランスとして描きたくない人たちがいるわけだよ。下手だとばれるから」
「船を描くことを避けたい?」
「そういうわけでもない。船は描かねばならない」
「じゃあどうするんだよ」
「個別のパーツの問題に還元したいのが彼らの心情」
「パーツなら描ける?」
「全体のバランスを取らなくていいからね。個別のパーツだけなら行けるのだろう」
「でも、パーツだけ描いても絵にならないじゃないか」
「だから中心に女の子を描く。パーツは女の子のアクセサリ扱いだ」
「えー。ただの艦これかよ」
「結局、艦これ的な表現とは、美少女は描けても船はブスにしか描けない人たちの駆け込み寺だったのかもしれない」
「それが、艦これブームが過熱して燃え上がった理由の1つだね」
「とりあえず、女の子の問題に還元してしまえば【ミッドウェー海戦の最上に後部の水上機用の飛行甲板なんて無いだろ】みたいな突っ込みは来ない。XXちゃんかわいいで終わる」
「まさか。恐い考えになっていたのだが」
「何を考えたんだい?」
「船を船として描くことを常に要求してしまった宇宙戦艦ヤマトというタイトルは自爆したのでは……」
「そういう要素はあるかもね。表現に逃げ道を用意しなかったのは難点だったのかもしれない。CG化された21世紀ヤマトは、ストレート勝負し過ぎて墓穴を掘った面はあるだろう」
「それでも初期の復活篇はマシだった理由は?」
「小さめのクルーザーから大きめの汽船YAMATOまで所有した西崎さんの功績だろう。本物の船でクルーズしてればそうそう破綻した船の描写には陥るまい。ストレート勝負で勝てる希有な人だ」